藻塩と呼ばれる塩をご存知でしょうか?藻塩は塩の種類ではなく、「塩の作り方」の一種です。太古の昔、縄文時代の頃から日本で作られていた、古の塩と言われています。
実はこの藻塩が今でも作られています。食べた感じ、味は非常にマイルドでおいしいと思いました。今回は古の塩「藻塩」をご紹介したいと思います。
日本には海水しかなかった
藻塩に行く前に、少し日本のお塩事情について書きたいと思います。
調味料の基本「塩」ですが、海水や塩湖、岩塩から作られています。残念ながら日本には塩湖も岩塩もありません。なので、日本人は昔から海水を使って塩を作ってきました。
これだけ海水が豊富なら楽に塩が取れたかというとそうではありません。なぜでしょうか?
雨が多い日本
海外に目を向けると、だだっ広い場所に海水をジャーっと流し込み、太陽の光で水分を蒸発させて「あらよっ!」と塩を作っています。これを天日製塩と言います。
ですが、日本ではそれができません。なぜなら雨が多いため、せっかく水分を蒸発させてもすぐに雨が振ってしまい、いつまでたっても塩にならないからです。
そこで古来から日本では、まず海水をどんどん濃縮して濃い塩水(かん水と呼びます)を作り、できたかん水をグツグツと煮詰めて塩を作るという二段階仕込みで塩を作ってきました。ちなみにグツグツと煮込む工程を煎熬(せんごう)と言います。
日本で一番古い塩の作り方に「海藻」を使った製塩法があります。これが「藻塩焼き」と呼ばれるやり方です。どういった作り方なのでしょうか?
古代の製塩「藻塩焼き」
日本では海水から塩を作ってきたことがわかりました。古来から伝わる「日本流の塩作り」をご紹介していきます。
縄文時代、私たちの祖先は海で拾ってきた海藻を焼き、できた「灰」をそのまま塩として使っていたと考えられています。これを灰塩と言います。
古墳時代(3世紀中頃~7世紀頃)になると、海藻を使って「かん水」を作る方法が登場します。今から1500年以上も前から日本人は海水濃縮をしていたんですね。
海藻は色々とありますが、主にホンダワラという海藻を使っていたようです。
そして「グツグツ煮るための土器」製塩土器を作りました。土器を使ってかん水を煮詰め塩を作っていたんですね。この原理は今も昔も変わっていません。
日本各地で製塩土器が見つかっていることから、当時日本中で同じような製塩法で塩を作っていたことが分かっています。
藻塩の作り方
万葉集にも「藻塩焼く」と出てくるくらい当時の人々にはポピュラーだった藻塩。どうやって作っていたのでしょうか。
藻塩焼きの作り方については諸説ありますが、一番有力な作り方に以下のようなものがあります。
- 海水のついた藻を天日に干す
- 塩の結晶が浮き出てきたら再度海水をかける
- 何度も海水をかけ流し濃縮海水(かん水)を取る
- かん水を煮詰めて塩を得る
この海藻を使って塩を作る製法を「藻塩焼き」と言います。海藻を使ってかん水を作り、土器や土釜を使ってせんごうしていたわけです。
今でも藻塩焼きを見ることができる場所があります。例年7月頃に行われます。藻塩焼の工程が「儀式」として再現されています。
宮城県無形民俗文化財『特殊神事 藻塩焼神事』
藻塩焼動画をご紹介します。今でも一部では作られているみたいですね。
古来から伝わる製法を現代に蘇らせた藻塩が販売されています。気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。食べてみましたが、尖ったところがなく非常にまろやか~~なお塩でした。いつも使っている真っ白なお塩と比べて少し茶色がかった塩で、肉にも魚にもとても合ういいお塩でした。